UiMint ~日常のワンカット~

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勇者に鎧は必要ない

私の人生はちょっと違ったロールプレイングゲームだった。

 

戦うたびに、悲しみ、怒り、憎しみ、不信、嫉みといった鎧をまとい、

自分を守ってきた。

 

戦うたびに、鎧がどんどん重くなっていき、身体がうまく動かせなくなり

遂にはカチカチに固まってしまった。

 

戦うたびに、鎧の冷たさと孤独で、心がどんどん冷えていき

遂には何も感じなくなってしまった。

 

廻りは敵だらけだけど、もはや疲れ切って戦う気力は一滴もない。

私の身体と心はもう動くことはないだろうと今日まで過ごしてきた。

 

 何の興味も持たなかったが、何故か読んだある新聞記事。

読み進めて行くと、胸の奥の方が僅かに動いた。揺れた感じ。

と同時に温かいものが込み上げ、目頭が熱くなった。

 

記事は、中国の青年が日本の男性にマスクを300枚送ったという

見出しで始まっていた。

 

極寒の日本で泊まるところがなく困っていた中国の青年を

躊躇することなく自宅に招じ入れ、温かい食事と部屋を提供した日本人男性。

二人は一緒に写真を撮ったが、名乗り合わずに分かれた。

 

何年か経ち、日本でマスクが不足しているのを知った中国の青年が

訪れた土地の神社宛にマスクを100枚送った。

 

マスクには一緒に撮った写真が貼り付けてあり、

「この人に渡して下さい」と書いてあった。

マスクは無事日本人男性に届けられた。

 

日本人男性が中国の青年にお礼のメッセージを送ると、更に200枚送られてきた。

以来、二人はメールでメッセージを送り合っている。

そんな内容だった。

 

見ず知らずの異国の青年を「困っているだろうから」と迷いなく自宅に泊めた

日本人男性の優しさと勇気。

 

右も左も分からない異国で、本当に困り果てていた中国の青年が

どれだけ日本人男性に感謝したことだろう。

 

中国の青年は、泊まった翌日にお礼として食品などを

山のように買ってきたとのことだったが、

一宿一飯の恩義をずっと忘れていなかった。

 

お互いを思いやる二人の心情を考えたとき、

凍り付いていた心がほろほろと溶けるのを感じた。

 

私の心の奥には、まだこんな感情が残っていたのかと

驚いたと共に安堵して、心が軽くなった。

 

勇者に鎧は必要ない。

そもそも敵などどこにも存在していなかったのだ。

武装解除してゲームを終わらせよう。

 

 

 

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 この場をお借りして

 中国の青年と日本人男性に、記事を書かれた方に、

 私を支えてくれている全てに、

    地球上の全ての皆さまに心からの感謝と祈りをお送りさせてください。

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