キンモクセイ
この秋で一番寒い朝。
縁側の窓を開けたその瞬間。
甘~い香りが鼻腔をつく。
一瞬、桃のような香りと感じたが、
この香りはキンモクセイ。
いまや盛りと、オレンジの花たちが
小さな花びらを精一杯開いている。
この秋、キンモクセイの花の香りに
段階があることを初めて知った。
咲き始めの頃。
どこからか幽かに漂ってくるその香りは
みずみずしく、少し遠慮しているような若さを感じる。
秋の訪れを知らせる香り。
開いたばかりの花たちは、固くてフレッシュ。
秋空に向かって鈴と咲く。
それに比べて今朝の香りときたら、
その存在を強烈にアピールしているような熟成した香り。
昨夜の雨で空気が洗われたことも手伝ってか
馥郁たるを通り越して甘い香りにむせる。
少し淫靡さも感じるその香りに頭がクラクラする。
晩秋を知らせる香り。
円熟して柔らかくなった花たちは、気だるげに少し下を向き始めている。
今年の短い秋が終わろうとしている。