白い薔薇
今にも雨が降り出しそうな湿り気を帯びた曇天の下。
年賀状を出しがてら、せっかく外に出たのだからと川沿いの道を歩く。
一歩一歩、足の裏の感触を確かめるように、
ゆっくりゆっくり歩く。
今まで見過ごしてきたこと、見逃してきたこと、
確かめるように。
川のさざめき、鳥の鳴き声。
風に揺れる薄の音。
言葉では言い尽くせない、この美しい世界をもっともっと感じたい。
自然と呼吸が深くゆっくりになる。
気持ちがゆったりしてくるのを感じる。
はぁぁぁぁぁ~。
深く、ふかぁ~いため息ひとつく。
あぁ~、何を焦っていたんだろう~。
焦る必要なんて、なぁ~んにも無い。
ゆっくりゆっくりでいいんだぁ~。
視界に棘が飛び込んできた。
道の植樹スペースに棘が植えられている。
私よりうんと背が高い。視線を上げる。
その先には、真っ白な薔薇が一輪、凛と咲いている。
なんて美しい。
ほぅっとため息ひとつ。
しまった、スマホ忘れた。